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村上選手,廣岡選手がリーグ1,2位を占める「TTO率」とは

スワローズ期待の若手である村上選手と廣岡選手が、TTO率という指標でセ・リーグ1,2位を占めている。彼らがトップ2の指標ということで、俄然「TTO率」に興味が湧いた。調べてみると野球のトレンドを掴む上でも面白い指標であり、スワローズファン以外の方にもぜひ紹介したい。

2019年セ・リーグTTO率ベスト5

TTO率とは

TTO率は、セイバーメトリクス好き以外は聞き慣れない指標だと思うが、とてもシンプルな指標だ。

TTO率:(本塁打+三振+四球)/打席

TTOは、Three True Outcomes【3つの真実の結果】の略。内野ゴロもヒットもフライアウトも、フィールドのどこかに打球が落ちるという点では同じなので、結果は運や相手の守備力に左右される。一方ホームランと三振とフォアボールの3つは、純粋に投手と打者の勝負であり、運や守備力に左右されにくい。それでこの3つが打席に占める割合をTTO率と呼ぶ。

TTO率の高い代表的な選手

TTO率は「ホームラン」か「三振」か「フォアボール」が占める割合を示す指標で、スコアが高いほど大味なバッティングの選手と見なされる。リーグ平均は30%程度で、高いバッターだと40%を超える。TTO率45%以上の選手となると相当限られ、100打席以上だと2019年のセ・リーグでは村上、廣岡、筒香選手の3名、パリーグではバルガス、ブラッシュ、メヒア、浅村選手の4名だけである。2018年はセ・リーグは丸、鈴木選手の2名、パ・リーグはペゲーロ、内田、清宮選手の3名。2017年はセ・リーグはバティスタ、エルドレッド選手の2名、パ・リーグでは山川選手のみ。3年間でのべ15名しかおらず、うち6名が外国人選手だ。

逆にTTO率が低いのは、2019年セ・リーグでは宮崎選手(17.3%)、大島選手(21.0%)、西川選手(22.1%)といったバットに当てるのが上手いタイプの打者が揃う。

TTO率はチームの勝利に貢献するか

「ホームラン」というポジティブな結果と「三振」というネガティブな結果を一緒にカウントしている指標なので、一概にTTO率が高い方が良い打者とは言えない。あくまで打者のスタイルを表す指標になる。TTO率の高い村上選手にも、TTO率の低い宮崎選手にもそれぞれに良さがある。

ただチーム全体のTTO率で見ると少し違う景色も見えてくる。2005年から2019年までのセ・リーグ6球団におけるチーム得点とチームTTO率との相関係数を調べてみると0.47(1.0に近いほど正の相関が強く、-1.0に近いほど負の相関が強い)となる。相関係数が0.4を超えていれば統計的にはそれなりに相関があり、TTO率が高いチームほどたくさん得点をあげていると言える。

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2005-2019 セ・リーグ チームTTO率/総得点

TTO率で見える野球のトレンド

TTO率とバッティングスタイルを大別すると、次のように言えると思う。

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低TTO率のバッティングスタイル

「バットにボールを当てて出塁や進塁の可能性を高め、三振は避ける」

 

高TTO率のバッティングスタイル

「当てに行くことはせず、狙い球を絞って思い切って自分のスイングをする」

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従来どちらかと言えば、低TTO率の方がベターと言う価値観があったように思う。低TTO率スタイルの方がチームに貢献しているイメージで、高TTO率のスタイルを一部の主力打者以外が実践すると「実力もないのに自分勝手」と思われるイメージがあったと思う。確かに、セカンドゴロでランナーを進塁させるような「意味のある凡退」はチームプレーとしてとても好印象だ。

しかし近年フライボール革命を始め理論(ファクト)による裏付けにより、長打の得点効率の良さに注目が集まっている。その結果、チーム全体として以前より高TTO率スタイルにシフトしてきている。宮崎選手や大島選手のようにバットに当てるスキルが高い選手は、低TTO率スタイルを続けることでチームに利益を与えるように思う。ただチーム全体のバランスとして、縮こまって当てにいくスイングをするよりも、高TTO率を目指す思い切ったバッティングをすることを重視するよう変わってきているように感じる。実際にこの5年間でセ・リーグTTO率は顕著に上昇している。その象徴がリーグTTO率1,2位を占めるスワローズの若き2人、村上選手と廣岡選手だと思う。

セ・リーグTTO率 年次推移

セ・リーグTTO率 年次推移

村上選手、廣岡選手への期待

筒香選手、浅村選手、丸選手らは十分に実績のある選手なので、思い切ったバッティングが出来る。また外国人野手は中途半端な好成績を残しても給料アップは見込めいため、思いきったバッティングをするしかない。ただ実績のない若手野手は、いくら思い切ったバッティングをしろと言われても、チームバッティングをしなければスタメンから外され二軍落ちしてしてしまうのではないかと頭によぎり当てに行くバッティングをしてしまうことがあると思う。そんな中でも「当てに行くことはせず、狙い球を絞って思い切って自分のスイングをする」という高TTO率のバッティングスタイルを貫いた村上選手と廣岡選手、そして彼らを見守ったスワローズの監督・コーチは素晴らしいと思う。リーグTTO率1,2位を占める2人は、未来のスワローズの希望である。2020年シーズンは2人ともTTO率40%超えを、そして合わせて「50本150打点」を達成して欲しい。

 

-参考Webサイト-

- nf3 - Baseball Data House Phase1.0 2019年度版

The Growth of 'Three True Outcomes': From Usenet Joke to Baseball Flashpoint | Society for American Baseball Research

MLBでは100年単位でみると、TTO率は綺麗な上昇傾向にある。100年前は15%程度だったのが、今や30%を超える水準となっている。

 

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